第二回 オーバーホールのススメ 必要編
- 公開日:2019.02.08
第二回 オーバーホールのススメ
皆さまこんにちは、
引き続きブログを読んで下さってありがとうございます。
第二回の「オーバーホールのススメ」
オーバーホールについてもう少し詳しく書いていきます。
◆オーバーホールとは?
オーバーホールとは
前回も申し上げたように『時計のメンテナンス』です。
主にケース内部の機械(ムーブメント)を分解して洗浄を行います。
その過程で必要に応じて部品を交換したり、
併せてケース、
ブレスレットなどの外装クリーニングや、
素材にやブランドより異なりますが
研磨を行う場合もあります。
結果、時計を一から造ることと
同じレベルの作業をします。
オーバーホールの内容は下のようになります。
①ムーブメントの洗浄
②劣化した部品交換
③新しい潤滑油の注油
④外装の洗浄
⑤組み上げ
⑥防水仕上げ
⑦精度調整
⑧最終検査
当店では、
当店の正規取扱ブランドであれば、
オーバーホールなどのメンテナンスを
受付いたしております。
※国際保証書ご持参ください。
※受付手数料¥3,240(返金不可)を頂戴する場合がございます
オーバーホール受付の流れ
①店頭受付
↓
②お預かりした時計を各正規サービスセンターへ送ります
↓
③お見積り(2週間以降)
↓
⑤オーバーホールの進行
↓
⑥ご納品
納期 約1ヶ月〜2ヶ月
※納期は時計の状態により変動します。
メーカー本国での修理が必要な場合、
ご納品まで数ヶ月かかる事もございます。
◆オーバーホールは必要なのか?
時計がどれだけの部品で動いているか
ご存知でしょうか?
腕時計という小さな箱の中の
100を超える小さな部品で
時計を動かしているのです。
その中にはピンセットの細い先端で
ようやく掴める程の小さなネジや、
髪の毛より細いゼンマイなどがあります。
そして、
それらの部品同士の摩擦を軽減するため
潤滑油が部分部分に注油されています。
注油といっても
どれくらいなのでと申しますと
爪楊枝の先もない程の
ごくわずかな量なのです。
そのわずかな量で機械を動かすので、
何年も使っているうちに潤滑油は“油切れ”をおこします。
つまり、劣化していくのです。
では、潤滑油が劣化するとどうなるか?
細かな部品同士
摩擦が強くなり、消費エネルギーが大きくなったります。
部品同士擦れあった粉が
他の各部品の隙間に入って
さらに不調を起こす原因になったりします。
歯車などを支える軸が磨耗して、
歪んだりすると精度にも直結します。
ほんの少しでも歯車が傾くだけで
精度に関係してしまいます。
機械式腕時計とは想像以上に精密な機械なのです。
何年も経過しているのに
なんら問題なく
時刻を刻んでいたとしても
外観から見えない内部で
時計の機械は損傷を起こし悲鳴を上げています。
その状態のまま
さらにご使用年数を重ねていくと
オーバーホール以上のメンテナンスが
必要になるケースがあります。
あと加えるとすれば
ご使用頻度かかわらず
防水性能も低下していきます。
ケースやリューズなどに
使用されているパッキンがやせて
劣化していくからです。
防水性能の強い時計ならなおさら。
もともと備えている防水性能を信じ
ついつい同じように
水などに触れ使っていると、
内部に水入りして錆びを生じ
結果オーバーホール以上の作業やパーツ交換が
必要になるケースがあります。
そうなると、
もちろん費用もオーバーホール料金以上になってきます。
オーバーホールをする際は、
防水性も含め腕時計を初めて手にした時と同様
完全な状態に戻してくれます。
このようなケースを防ぐためにも
定期的なオーバーホールが必要なのです。
時計の歴史は紀元前から始まりますが、
歯車などの機械で動いて
小型で“持ち歩ける時計”が生まれたのは1600年代です。
そして、現在の時計と
同じ仕組みが作られはじめたのは、1670年代。
18〜19世紀にかけて
機械式時計の小型化が進み、
“懐中時計”の誕生により快適に持ち運べるサイズになりました。
そこから利便性を求めて腕時計が生まれ現在に至ります。
500年近くほとんど同じ仕組みで
今の時計も動いているのです。
機械式時計の魅力はそこにあります。
あなたのその機械式時計も
これから先長い年月を共にし、
息子さんやお嬢様、そしてお孫さんへと
受け継ぐことのできる宝物。
少しでも永く安全に、快適に
お使いただけるように
定期的なオーバーホールオススメいたします。
機械式時計だけじゃない、クオーツ式時計も
電池で動くクオーツ式時計も同様です。
機械式に比べると部品数は少ないですが、
クオーツ式も同様に小さな部品が集まってできています。
アナログ文字盤ならば、
針やそれを動かす歯車が当然あります。
クオーツの腕時計も
機械に使われている
歯車は指先に乗るほど小さいです。
時針も分針も秒針も、その歯車で回しています。
でどうなるかは、
上記に申し上げた機械時計の場合同様の症状になります。
クオーツ式時計だからオーバーホールは必要ないとはなりません。
クオーツ腕時計の意外な落とし穴!?
クオーツ時計で注目すべきは
機械内部にある電池です。
その電池で動くクオーツ時計が止まったら
すぐに電池交換をお願いします。
もしそのまま放置いたしますと
時計の中の電池が、
液漏れしてしまう可能性があるからです。
時々古い乾電池に白い結晶のような物がついていたり、
青っぽい液がついていたりした経験はありませんか?
それが“液漏れ”です。
※液漏れした電池
※液漏れした電池(右)、正常な電池(左)
電池の中には電解液が入っていて、
漏れないようにゴム製のパッキンで塞いでいます。
輪ゴムを長年放置すると、
なにかをしたわけでもないのに硬くなって切れやすくなるように、
パッキンも経年劣化します。
その結果パッキンに痩せやヒビ割れが起きると、
内部の電解液が漏れ出して“液漏れ”になります。
電池の液漏れが起こると、
漏れた液が周囲の部品に付着し
錆びさせたり、
通電状態が悪くなったりします。
液漏れしたクオーツ時計のほとんどは
ご使用年数にかかわらず
オーバーホールが必要になります。
また、
暑い場所や寒い場所など、
周りの環境によっては電池の劣化が早くなります。
さらに劣化が原因で電池が膨張を起こし
機械の故障に繋がる可能性もあります。
※膨張した電池(左)、正常な電池(右)
時計により異なりますが、
大体の電池寿命は2〜3年が目安です。
時計が止まったらすぐに交換するか、
2~3年たって動いていても、
早目の電池交換をオススメします。
定期的に新しい電池に交換することは
時計の大きな損傷を防ぐことにつながります。
◆オーバーホールの時期
ここまでオーバーホールの意味についてやってきましたが、
なら一体どのタイミングですれば良いのか、と悩みますよね。
色々と言われていますが、
機械式は5年、
クオーツ式は電池交換2〜3回
を目安にオーバーホールの時期とお考え下さい。
止まってからオーバーホールをされることは
オススメではないです
なぜかと申しますと、
広範囲の部品交換が必要になる可能性が高いからです。
特に10年以上使い続けてきた時計の場合、
油切れの他に歯車の軸が摩耗して、
部品交換が多くなる事が多いからです。
当然、部品の交換が多いほど費用は掛かります。
そんな事態を予防する為にも、
先ほど申し上げたタイミングが
オーバーホールの時期とお考えください。
終わりに…
オーバーホールについて話してきましたが、
まだ細かい疑問もあるかと思います。
疑問に思う箇所は、
電話でもメールでもお気軽にご連絡ください。
長年使われた方にとって
時計とはご自身の時間を刻んできたパートナー。
思い入れのある時計と一緒に時を刻んで過ごす事は、
ご自身にとって大切な思い出となります。
これからも長く安全に快適にお使いいただくために
私たちがサポートさせていただきます。
オーバーホールのススメ 第二回、
今回もご愛読ありがとうございました。
投稿:技術部 加藤
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